僕のアンチエイジング(8)体の慢性炎症を抑える
更新日:2026/11/01
炎症反応とは、細菌・ウイルスなどの感染、外傷、アレルギーなどによって体の組織が刺激・損傷を受けた際に、体を守るために起こる生体防御反応です。
急性炎症はケガや感染などをきっかけに、赤み・腫れ・熱感・痛みといった強い症状が現れる一時的かつ急激に起こる正常な防御反応で、原因が取り除かれれば数日から1週間ほどで治まります。
慢性炎症は、症状をほとんど起こさないほどの微弱な炎症反応が、長期にわたって続くものです。慢性炎症によって組織の細胞が死滅してゴムのように硬くなる「線維化」が進み、主要臓器の老化を進めること、認知症やフレイルのリスクを高めることなどが分かっています。
高齢化によって、なぜ体内の慢性炎症が広がるのか。最新の研究から「老化した免疫細胞が体内の炎症を起こす」「加齢によって老化細胞が蓄積すると慢性炎症を起こす」「動脈硬化を起こした血管から炎症が広がる」「腸内細菌の老化によって炎症が広がる」といったことが分かってきました。
慢性炎症を伴う病気としては、従来から関節リウマチなどの自己免疫性疾患などが知られていますが、現在では生活習慣病や動脈硬化、がん、認知症、うつ病など高齢社会特有の病気をもたらす原因の一つであることが分かってきました。慢性炎症は「万病のもと」とも呼ばれます。
急性炎症はアクシデントなので防げないことが多いですが、慢性炎症は日々の行動で制御できます。今回は慢性炎症を抑えるために私が行なっていることを述べます。
1.オメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)とビタミンDで慢性炎症を抑制
毎日、朝食で油の多いコーヒーを飲んでいて(僕のアンチエイジング6体の糖化を防ぐ2)、このコーヒーにはオメガ3(n-3系)脂肪酸であるα-リノレン酸の豊富なアマニ油も加えています。毎日の朝食後に、フィッシュオイル(EPAとDHA含有)とビタミンDのサプリメントを飲んでいます。昼食ではα-リノレン酸の豊富なクルミを、家の食事でもほぼ毎日魚を食べています。

オメガ3脂肪酸を摂るためのアラスカサーモンのフィッシュオイルと南極のオキアミのクリルオイル、アマニ油、塩鮭と、ビタミンDのサプリです。
慢性炎症を抑制する科学的エビデンスがそろっているのが、食事でオメガ3系脂肪酸をとることです。オメガ3系脂肪酸としては青魚に含まれる動物性のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、アマニ油やエゴマ油やクルミに含まれ体内でEPAやDHAに変換される植物性のα-リノレン酸があります。古くから抗炎症作用、心血管保護作用、脳神経保護作用などが知られていますが、最近その分子レベルの作用メカニズムが次々と明らかになっていて老化抑制の効果も確認されています。魚介類をよく食べている人ほど慢性炎症が低いという結果が出ています。アラキドン酸に代謝され炎症反応に関わるオメガ6(ω6)脂肪酸(サラダ油などに多い)を減らしてオメガ3脂肪酸を増やすことが炎症抑制につながります。細胞膜を構成するリン脂質には、オメガ3脂肪酸が必要なので、不足しないように、魚油やアマニ油やエゴマ油などで意識的にω3脂肪酸を摂ることが、細胞膜の柔らかさを維持して細胞の老化を防ぐことにつながります。ω3脂肪酸とω6脂肪酸は多価不飽和脂肪酸で人体では作られない必須脂肪酸です。ω6脂肪酸も少しは摂らないといけないのですが、日常生活で欠乏症を生じることはほぼ無く、ω6脂肪酸を摂りすぎている傾向の人が多いので、ω3脂肪酸とω6脂肪酸のバランスを保つことが大切です。
ビタミンDは、小腸からのカルシウムやリンの吸収を促進し、血中カルシウム濃度を調節して強い骨や歯をつくる作用がありますが、免疫細胞の働きを調節し、体内の炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)の産生を抑える抗炎症作用もあります。ウイルスなどの感染症対策や、アレルギー・花粉症を緩和に関与し、筋肉の収縮や神経伝達に関わり転倒予防やサルコペニア対策に役立ち、がんの罹患リスクを下げます。日光に当たると皮膚で作られますが、不足がちなのでサプリで補うことができます。 ω3脂肪酸と相乗効果が期待できます。
2.腸活を達成して慢性炎症を抑制
僕のアンチエイジング(2)(3)(4)で実行している取り組みの記載があります。
慢性炎症と腸内細菌との関係も明らかになりつつあります。炎症を引き起こす免疫細胞を指揮しているのが制御性T細胞(Treg)です。腸内細菌が食物繊維を分解して産生する短鎖脂肪酸が多いとTregが増えて活性化されます。腸活が達成されて酪酸産生菌が多いとTregの活性が高く、免疫細胞の過剰な活動が抑えられ慢性炎症を抑制します。腸内細菌のバランスが悪くなると腸の粘膜の免疫細胞の働きで小さな炎症が起こり、それが全身に広がり全身の慢性炎症を引き起こします。
3.体の糖化を防ぐことで慢性炎症を抑制する
僕のアンチエイジング(6)で実行している取り組みの記載があります。
RAGE(Receptor for Advanced Glycation End-products:終末糖化産物受容体)とは、体に蓄積した老化物質であるAGEs(終末糖化産物)と結びつく細胞表面の受容体(アンテナ)です。食事や高血糖で余った糖が全身の蛋白質に結合してできる糖化産物に、飲酒や喫煙、紫外線、ストレス、糖質と脂質の摂りすぎで生じるアルデヒドが作用することで生成されるAGEsが、細胞にあるR A G Eにキャッチされます。結合の刺激によって細胞内で強いシグナルが発生し、活性酸素(ROS)や炎症性物質が増えて糖化ストレスや組織の障害を引き起こし、慢性炎症を引き起こします。
4.体の酸化を防ぐことで慢性炎症を抑制する
僕のアンチエイジング(7)で実行している取り組みの記載があります。
活性酸素が増えすぎると、外からの敵だけでなく、自分の健康な細胞や組織まで傷つけてしまいます。傷ついた細胞を直そうとする働きが起きると、それが「炎症」になります。炎症が起きると、免疫の細胞がさらに多くの活性酸素を作ります。この状態が続くと、体が休まらずに慢性的な炎症となります。
5.動脈硬化を防ぐことで慢性炎症を抑制する
僕のアンチエイジング(3)で実行している取り組みの記載があります。
動脈硬化は単なるコレステロールの蓄積ではなく、長年にわたり血管壁で微弱な「慢性炎症」が続く病態です。 高血圧や高血糖、喫煙などが原因で血管の内皮細胞が傷つきます。傷ついた内皮細胞に入り込んだLDLコレステロールが酸化され、それをマクロファージ(免疫細胞)が食べ込んでプラーク(塊)が形成されます。炎症性サイトカイン(IL-1βやTNF-αなど)が持続的に放出され、プラークが大きくなり、破裂しやすくなります。 血液に放出された炎症性サイトカインが全身の慢性炎症を引き起こします。
6.適正体重を維持し内臓脂肪を減らして慢性炎症を抑制する
体重の管理は体調管理の主題の一つで、それなりに取り組んできていますが具体的な内容は、運動編で明かします。
内臓脂肪はさまざまな炎症性物質を生み、糖尿病や心血管疾患のリスクを高めることが分かっていて、脳の慢性炎症の発生にも関わることが明らかになってきています。
7.激しすぎない適度な運動で慢性炎症を抑制する
運動によって筋肉から分泌されるマイオカインには、体内の慢性炎症を抑える「抗炎症作用」があります。 代表的なマイオカインであるインターロイキン-6(IL-6)は、運動による筋肉の収縮に伴って分泌され、全身の炎症反応を抑制する働きをします。 運動不足や内臓脂肪の蓄積は、自覚症状のない「慢性炎症」を引き起こし、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病につながります。運動でマイオカインを増やすことにより、こうした見えない炎症を鎮める効果が期待できます。
8.感染症に罹らないように心がけることが慢性炎症の予防になる
一般外来の患者の大半は感染症なので診療所で無防備だと簡単に伝染されます。昔は素手のマスク無しで外来をしていましたが、新型コロナ以降は感染防御意識が高くなりました。防御着は着なくなりましたが、毎日、手袋とN95マスクとフェイスシールドを装着して外来をしています。前は時々感染症にかかっていましたが、この感染防御対策を取るようになってからは感染症に罹患しなくなりました。受けられるワクチンは全て受けてワクチンで防げる感染症に罹らないようにしています。
感染症(急性炎症)をきっかけに慢性炎症へと移行する現象は、医学的に広く知られています。 免疫の網をかいくぐってウイルスや細菌が体内に潜伏し続けると、免疫システムが常に攻撃モードになり、炎症がダラダラと続く病原体の持続感染になります。 近年の研究(大阪大学など)では、例えば新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した細胞が、周囲の感染していない細胞に対して「細胞老化」を引き起こす信号(TNFαなど)を出すことが分かっています。老化した細胞は、炎症を引き起こす物質(サイトカイン)を分泌し続けるため、ウイルス自体が消えた後も炎症が持続します。 通常、感染が収まると免疫反応を抑えるブレーキ(収束の仕組み)が働きますが、この制御が狂うことで、自身の正常な組織まで攻撃し続けてしまいます。
感染症罹患前から慢性炎症状態だと、感染症の重症化と持続感染につながり、慢性炎症の増悪を引き起こし、炎症に起因する疾患を発症します。これが「風邪は万病の元」と言われる現象の機序です。
9.歯周病予防のオーラルケアで慢性炎症を抑制する
寝る前に歯周病予防用のデンタルリンスで口をすすいでから電動歯ブラシで歯磨きをします。2から3日に1回は歯間ブラシと糸ようじをかけます。起床したらまず水で口をゆすいで寝ている間に増えた口内細菌を減らします。
日本の成人の約8割に何らかの歯周病関連所見が見られるという歯周病は慢性炎症性疾患です。歯周病になると歯周病菌が血管や消化管から全身に回り、認知症、糖尿病などの疾患を引き起こします。原因菌はいろいろありますが、主要かつ悪玉の性質を持つ菌としてPg菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス菌)があります。歯周病と認知症との関連で、“真犯人”として最も有力視されているのが歯周病原因菌のPg菌です。
慢性炎症は明確な局所の症状が出ないことが特徴です。そのため、以下のような「なんとなく調子が悪い」という曖昧な全身症状が続きます。
- ・強い疲労感:しっかり眠っても疲れが取れない、常に体がだるい
- ・ブレインフォグ:頭がぼーっとする、集中力が続かない、物忘れが増える
- ・精神的な不調:やる気が出ない、憂鬱な気分になる
- ・身体の痛みや不調:関節や筋肉が痛む、口内炎ができやすい、肌荒れしやすい、風邪をひきやすい
- ・美容・老化のサイン:シミ、シワ、白髪が増える
臨床では血液中のCRP(C反応性タンパク)や白血球数(WBC)が高いことで炎症の程度を判断します。あぶみ小児科クリニックには血管または指先から採血をして数分でC R Pと白血球数の測定ができる機器があります。慢性炎症が気になる人は相談いただけたらと存じます。





